地球儀と地図の役割
地球の広がりを理解するツールとして地球儀が非常に有用です。
地球儀は地球の表面をかなり正確に模倣し、距離や面積、方位、角度などを示しています。
しかし、この実用性に対して、その大きさと持ち運びにくさが大きなハンディキャップとなります。
一方で、より携帯性に優れた地図が必要とされるケースも多いです。
地図は地球儀の立体的な形状を二次元平面に落とし込むため、不可避的に情報の歪みが発生します。
この歪みは、例えばミカンの皮を平らに広げようとするときに生じる断裂や曲がりを想像すると理解しやすいです。
地図では距離感や形状が正確に表現されず、多少の誤差が生じることがあります。
これらの制約を踏まえ、さまざまな目的に合わせて様々なタイプの地図が開発されています。
各地図は、特定の用途に最適化されているため、使用する際にはその特性を理解し選択することが重要です。
特に有名な図法の特徴と用途について
メルカトル図法の特徴と用途
メルカトル図法は、地図上で角度を正確に表現するために開発された方法の一つです。
この図法においては、経度と緯度が直角に交差することで、航海などのナビゲーションに非常に便利です。
特に、航海者はこの地図を使用して、直線コースを描きやすくなるため、羅針盤と併用して効率的に航路を定めることが可能です。
メルカトル図法では、地球の球体形状を平面に展開する過程で、高緯度地域が実際よりも拡大されて表示されるという特性があります。
このため、地図上で示される距離や方位は、実際の最短距離とは異なる場合がありますが、舵取りを単純化する点で航海には最適です。
この図法が特に航海用途で広く利用される理由は、出発点と目的地を直線で結び、その航路を保持することができるからです。
■ メルカトル図法の要点
- 角度の正確な表現が可能な地図作成法
- 主に航海用地図で採用される
- 地図上の距離や面積は実際の値と異なる場合がある
モルワイデ図法の特徴と用途
モルワイデ図法は、地球の表面積を忠実に表現するために設計された地図投影法です。
この図法は特に、中緯度から高緯度の地域の歪みを最小限に抑えることに焦点を置いています。
これにより、楕円形の投影が可能となり、地図上の面積が現実の比率に近く表されます。
主に分布図の作成に適しているモルワイデ図法は、地理的なデータの正確な面積表現が求められる際に利用されます。
例えば、自然資源の分布や人口密度などの地図を作成する際にこの図法が選ばれる理由は、面積の正確な表現により、データが実際の地理的な広がりを正しく反映できるためです。
ただし、モルワイデ図法では距離や方位の正確さは犠牲にされがちです。
そのため、航海や方向を求める用途には不向きであることに注意が必要です。
■ モルワイデ図法の要点
- 地図上で面積の正確さを保証する投影法
- 分布図の作成に適している
- 地図での距離感や方向の精度には制限がある
正距方位図法の特徴と用途
正距方位図法は、ある特定の点からの距離と方位を正確に表示する地図投影法です。
この図法は、円形の地図上で中心点から任意の目的地までの直線距離と方位角を正しく示すために設計されています。
主に航空図で採用されるこの図法は、飛行機の航路設定に適しています。
パイロットは中心点からの正確な距離と方位に基づいて航路を計画することができます。
ただし、この図法は地図の中心から離れるほど、地表の面積や角度が歪むため、中心から遠くの地域の地理的な詳細が不正確になりがちです。
この特性は航空図作成時に考慮する必要があります。
■ 正距方位図法の要点
- 中心点からの距離と方向を精確に描く地図投影法
- 主に航空用地図で利用される
- 地図上の面積や角度の精度は保証されない
■各図法の特徴と用途まとめ
地図投影法 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
メルカトル図法 | 角度が正しい | 航海図 |
モルワイデ図法 | 面積が正しい | 分布図 |
正距方位図法 | 中心からの距離と方位が正しい | 航空図 |
地図投影の三つの主要分類
地図投影法には三つの基本的なタイプがあります。
- 正積図法
この図法は、地球の実際の面積を地図上で忠実に再現します。地球表面の面積比を地図上で正確に表現することが特徴です。 - 正角図法
地球上での角度の関係を地図上で正確に再現する図法です。これにより、角度が維持されるため、主に航海や航空での使用が理想的です。 - 正方位図法
特定の基準点から見た地球上の各点への正確な方位を地図上で示します。この図法は、特に方位を基に移動する際に役立ちます。
各図法の説明とそれに関連する地図の形式
舟形の地図(globe gores)
地球の球形を表現するために球面を複数の帯に分割し、それらを平面上に展開した形状。
地球を切り開いて広げたようなイメージを持ちます。
正距円筒図法
舟形の地図をさらに処理して、横方向に引き伸ばし、帯間の隙間を埋めることで、連続した円筒形の地図を形成します。
これにより、一つの連続した平面として地図を表現することが可能になります。
方位図法(正軸)
方位図法(正軸)は、北極を中心に設定し、球体の地球をそこから開いたような形で平面に展開する方法です。
この展開では、緯線方向に引き伸ばして地図上の隙間を埋めることで、正距方位図法の地図が形成されます。
このプロセスにより、北極を中心とした方位が直感的に理解しやすく表現されています。
正積図法の概要と特徴
正積図法は、地球の実際の面積を地図上で正確に表現するために用いられる方法です。
以下にその代表的な例を挙げます。
サンソン図法の特徴
サンソン図法では、舟形の地図を横にずらして、隙間を作らずに並べることで、地球の面積を正確に再現します。
この方法により、地図上での面積が実際の地球上の面積と一致するように表現されています。
サンソン図法の利点と欠点
利点:低緯度地域においては大陸の形状が比較的正確に描かれます。
欠点:高緯度地域では大陸の形が歪むことがあります。
モルワイデ図法の特徴
モルワイデ図法では、サンソン図法に基づいて作成された地図をさらに加工し、緯度に応じて縦横比を適切に調整しています。
その結果、地図の全体的な形状が楕円形を呈し、地球上の面積が地図上でも正確に再現されています。
モルワイデ図法の利点と欠点
利点:中緯度および高緯度地域での大陸形状が比較的正確に表されます。
欠点:低緯度地域においては大陸の形状に歪みが見られます。
グート図法の特徴
グート図法は、サンソン図法とモルワイデ図法を基にして、面積の正確性を保ちつつ地球全体の大陸の形状の歪みを最小限に抑えることを目指しています。
この方法では、異なる中心経度を持つ複数の地図を描き、それらの適切な部分を組み合わせて一枚の世界地図を形成します。
この技術により、地図全体で面積が正しく表現されています。
グート図法の利点と欠点
利点:大陸の形状の歪みが全体的に少なく、地理的な分布を表現するのに適しています。
欠点:地図に断裂が存在するため、移動の流れや方向性を矢印で示す用途には向いていません。
ボンヌ図法の特徴
ボンヌ図法は、円錐図法に基づいており、舟形の地図を赤道以外の特定の緯度で切り取り、隣接する各セクションを緯線方向にずらして隙間なく配置する方法です。
この手法により、地図上での面積の正確性が保たれます。
特に、この図法では北緯30度を標準緯線として使用しています。
ボンヌ図法の利点と欠点
利点:地図の中央経線と標準緯線が直線で示され、これらの部分では地理的な正確性が高いです。
欠点:地図の周辺部分に歪みが顕著であり、広範囲をカバーする世界地図の作成には適していません。
正角図法の概要
正角図法は、地球上の角度を地図上で正確に表現する投影法です。
以下にその代表的な例を挙げます。
メルカトル図法の特徴
メルカトル図法は正角円筒図法に属し、地図を横方向に引き伸ばす際、南北方向にも同様に拡張しています。
この方法により、地球の極端な南北部が理論上無限遠に達するように描かれます。
ただし、実際の地図表現では緯度85度までを限界とし、それ以上の高緯度地域は通常省略されています。
メルカトル図法の利点と欠点
利点:等角航路が地図上で直線として表現されるため、航海図としての利用に適しています。
欠点:高緯度地域の面積が過度に拡大されることと、地図上の最短距離が実際には曲線として描かれる点です。
正方位図法の概要
正方位図法は、特定の地点からの方位を地図上で正確に表現する投影法です。
以下にその代表的な例を挙げます。
正距方位図法の特徴
正距方位図法は、地図の中心点からの距離と方位を正確に表示することに特化した地図作成法です。
この図法では、中心点から見た距離と方位が正確に描かれていますが、中心以外の他の地点からの距離や方位は正しく表現されていません。
また、この図法では面積の正確な表現も保証されていない。
正距方位図法の利点と欠点
利点:大圏航路を地図の中心から他の地点へ直線で表示することができ、これにより航空図に適しています。
欠点:地図の周辺部の歪みが大きい。
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